「日本人は虫歯が多い」って本当?若者がやりがちな5つの悪習慣

コロナ渦でリモートワークの人が増えましたが、それにともない虫歯の患者さんも増えているそうです。リモートワークと虫歯って関係あるの?と思うでしょう。実は在宅勤務には、意外な虫歯の原因が潜んでいます。今回、株式会社clappinghands代表、歯学博士、Light Heart Dental College主宰角祥太郎先生にインタビューしました。今回は、虫歯を作ってしまう意外と気づかない悪習慣についてご紹介します。


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日本人に虫歯が多いって本当?

インタビュアー:「日本人に虫歯が多い」と聞いたことがあるのですが、それは本当ですか?

角先生:明確なエビデンスはないのですが、北欧に比べると多いのではないでしょうか。

インタビュアー:そうなんですね。外国と日本での虫歯に対する意識の違いなどはありますか?

角先生:そもそも予防に対する意識が違いますよね。海外では歯の治療が保険適用されないので、虫歯にならないように熱心です。日本人は保険治療という名の炊き出しと思っていて、制度が完璧すぎるので気が抜けているように感じます。保険診療が充実し過ぎているがゆえの課題かもしれませんね。

インタビュアー:年代ごとに虫歯で気をつける点ってあるんでしょうか。

角先生:子供だったら砂糖をコントロールして、甘いものを極力食べないことです。30代から50代は、特に食いしばりですね。食いしばりが続くと50代で奥歯が抜けることもあります。「50代が歯の寿命」という先生もいるくらい、50代以降は急に口の血の巡りが悪くなって、血流が悪くなるんです。

インタビュアー:そうなんですね。怖いですね。それってマッサージとかでは改善しないんですか?

角先生:マッサージしても改善しません。歯の中の血流はどうにもならないんです。使っていくと劣化するので、歯が衰える時期がどうしても来てしまいます。だから、働き盛りのビジネスパーソン世代に、特に気を付ける必要があります。高齢になってから焦って「どうしよう」となる方も多いのですが、その時点では選択肢がないこともあります。後々自分が年を取ってから後悔しないように、早いうちから対策しておくことが大切です。

インタビュアー:本当に虫歯対策は早いに越したことはありませんね。8020運動(※)はどの程度達成されていると思いますか?

※「8020(ハチマル二イマル)運動」は、「80歳になっても歯を20本以上残そう」という運動です。1989年、厚生省と日本歯科医師会が提唱して開始されました。

角先生:8020は、日本はもう50%以上達成していて、今結構いい数字になっているはずです。20本残っている人は8本抜けています。最近では、そもそも20でいいのか?という議論が出てくるようになって「8029運動」と呼ばれています。8020が提唱されたのが1989年ですが、それからもう30年以上経っているので、時代に合った内容に変えるべきだと感じます。

インタビュアー:ということは、80歳過ぎて入れ歯の人って減ってきているのでしょうか。

角先生:そうですね、減っています。実は、高度経済成長期に「砂糖を食べると元気になる」という迷信が流行って、多くの人で甘いものを食べる習慣があったんです。また、70年前までは甘いものと虫歯の因果関係は解明されていませんでした。最近ではそういう意識がだんだんと改善されてきたのか、以前よりは減っていて良い傾向だと思います。

インタビュアー:時代の流れによる影響も大きいのですね。歯が衰えて抜けてしまっても、なるべく入れ歯はしない方がいいのでしょうか。

角先生:入れ歯はした方がいいです。入れ歯している人とそうでない人を比較すると、歯がないのに入れ歯をしない人は認知症や寝たきりになるリスクが高まるんです。「歯がないだけで医療費3倍」と言われるくらい、歯がないことは健康に害を及ぼします。一方、入れ歯の場合は、歯がないよりはましですが、健全な歯に比べて2割程度の力でしか噛めません。どちらにしても、残りの歯に負担がかかってしまうんです。したがって、最も重要なのは高齢になっても自分の歯を残すことですね。もし入れ歯にせざるを得ない状況になったら、入れ歯よりインプラントをおすすめします。

 

若者がやりがちな歯に良くない習慣とは?

インタビュアー:若者がやりがちな習慣を5つ教えてください。

角先生:①ストレス②食生活③白砂糖④食いしばり⑤口呼吸 ですね。

インタビュアー:ストレスって歯にも影響するんですね。

角先生:しますね。ストレスは、歯ぎしり、食いしばり、免疫力の低下、唾液分泌量の低下を招きます。

インタビュアー:②③の食生活と白砂糖、とはどういうものでしょうか。

角先生:だらだら食べる食生活ですね。テレワークになって虫歯の人が急に増えたのは、だらだら食べる習慣ができたことも関係しているでしょう。

また、砂糖がたくさん入ったジュースを飲んだり、甘いものを食べてそのまま歯を磨かなかったりする習慣は想像以上に悪影響を及ぼします。特に白砂糖はべたつくので、甘いものを食べたら、なるべくすぐ歯磨きをしてください。

あとは歯磨きした後にアルコールを飲んで、そのまま歯磨きせずに寝てしまう方も注意です。

インタビュアー:確かにビールなどは、甘くないからいいやと思って油断しがちですね。

角先生:ビールの中に入っている炭酸や糖分が歯に残ったまま寝ると、歯に影響が出てしまいます。

インタビュアー:酸っぱいものってどうなんでしょうか。

角先生:酸は意外と知られていませんが、怖いんです。梅酢やビネガーを、身体にいいからと言って飲んでいる人にありがちで、そういう人の歯のエナメル質は剥がれています。エナメル質はゆで玉子の殻とイメージしてください。殻をむいたゆで玉子と、殻のついたゆで玉子とでは、どちらが先に腐るか想像できますよね。

インタビュアー:酢も意外と怖いですね。④の食いしばりなんですけど、自分が食いしばっているなって自覚のある人は少ないと思います。自己診断などはできるんですか?

角先生:ほっぺたの内側に食いしばりの痕(頬粘膜圧痕)ができる、下の糸切り歯がすり減っている、首筋が凝る。これに当てはまる方は食いしばりをしている可能性が高いです。スマホやPCで作業する時に猫背になっている方も、知らず知らずのうちに食いしばっていることがあるので気を付けましょう。

私がマウスピースをおすすめしているのは、食いしばりでマウスピース適用の人が増えているからです。

インタビュアー:マウスピースって、値段はどのくらいするんですか?

角先生:保険適用負担金3,500円くらいです。

インタビュアー:そうなんですね!思ったより安くてびっくりです。それにしても、食いしばりって結構問題ですね。

角先生:そうなんです、食いしばりひとつ取っても、いろんな病気の原因になることがあるので注意しましょう。

インタビュアー:⑤の口呼吸は、なぜ問題なんですか?

角先生:口呼吸がなぜ悪いのかと言うと、唾液が乾いて乾燥するとばい菌がそのまま残るからです。

インタビュアー:自分が口呼吸しているってどうやって分かるんですか?

角先生:前歯の歯茎が腫れる人は口呼吸の傾向がありますね。

あと、口呼吸がどれだけ健康に悪いかについて、面白い実験があります。実験の対象は子どもだったんですけど、口呼吸をずっとさせた子どもとそうでない子どもを比較したところ、口呼吸の子どもの顔が歪んで、脳みそに酸素が回らなくなってぼーっとするようになったんです。

インタビュアー:そんなに影響あるんですね!

角先生:アトピーやアレルギーも口呼吸が原因になっているということも分かっています。鼻呼吸は鼻毛のおかげでほこりを絡め取れるのですが、口呼吸だとそのままダイレクトに肺に入ってしまいますからね。

インタビュアー:私も今日から鼻呼吸にします。でも口呼吸の人が鼻呼吸にするってなかなか大変ですよね。習慣化が・・・。以前、どこかの先生が「口にセロテープを貼るといい」と言ってました。

角先生:それもひとつの手ですね。鼻呼吸の価値がこれだけあるということが分かっていただけたのはないでしょうか。舌の先端を下の歯の裏に置く習慣も取り入れて欲しいですね。

インタビュアー:舌の位置も関係あるんですね。勉強になります。

 

実は知らない!正しい歯磨き方法

インタビュアー:先生、フロスはやるべきですか?

角先生:多分「フロスが虫歯予防につながる」っていうエビデンスが探せばあるとは思います。そんなことよりも、単純に気持ちいいからですよね。気持ちいい=清潔=菌が発生しにくい、ということです。

インタビュアー:フロスの使い方で何かコツはありますか?

角先生:フロスは歯磨きの後ではなく、歯磨きの前にやってください。歯磨き粉を歯と歯の隙間に入れることで、隙間に菌が発生しにくくなるためです。

インタビュアー:フロスは歯磨き粉の後かと思っていました!では、先生のおすすめの歯磨き粉を教えてください。

角先生:虫歯の原因についてお話しましたが、実は歯ブラシと虫歯には因果関係はありません。どちらかというと歯磨き粉の選び方が重要ですね。歯磨き粉は薬で、歯ブラシはあくまで道具ですから。私のおすすめだと「リナメル」です。汚れ吸着して、表面虫歯を治してくれて、カルシウム抜けたところを保護するという長所があります。研磨剤が入っておらず、吸着してくれます。

インタビュアー:研磨剤ってやっぱり入っていない方がいいのでしょうか。

角先生:研磨剤はやすりですからね。歯磨き粉の種類によって削れたという方もいます。

インタビュアー:そうなんですね。リーズナブルな歯磨き粉だと何がおすすめですか?

角先生:安いものだと「クリニカ」がおすすめです。あまり研磨剤が入っていませんし、私はクリニカの商品開発のコンセプトに共感しているので、個人的に気に入っています。

インタビュアー:歯磨き粉の選び方のコツってありますか?

角先生:悩みに対してどういう解決策を選ぶか?が重要なので、自分で何に悩んでいるのか?を明確にしてみましょう。例えば、歯を白くしたいのであれば、そういう成分の入っているホワイトニングの歯磨き粉を選ぶとかですね。

インタビュアー:歯ブラシの選び方はどうでしょう。

角先生:柔らかい歯ブラシ、硬い歯ブラシって実は上級者向けなんですよ。歯磨きスキルに自信がある人ってあまりいないと思います。初心者には硬さは普通が一番良いです。一番楽に効率的に磨けますしね。

インタビュアー:歯磨きのタイミングは、食後に毎回必要でしょうか。

角先生:例えばですが、夜は歯磨きをしっかりして昼はしないというのは、「夜はお尻を拭くけど昼はしません」みたいなことですね。口とお尻は同じ内臓です。一番良いのは、何か食べたら毎回磨く。何か使ったら必ず洗いますよね?

インタビュアー:そうは言っても、毎回は難しいという人も多い気がします。時間がないときは、うがいだけでもだめですか?

角先生:うがいだけでは虫歯防止はできません。メイクを落とさないで洗顔しても意味がないですよね?それと同じです。どうしても忙しかったら、1分でもいいので歯を磨く回数を増やしてみてください。やらないよりもずっとましですし、こういった小さい心掛けが将来の歯の健康につながりますよ。

 

まとめ

角先生のお話を聞いて、生活習慣がこれほど歯の健康に関係しているとは驚きでしたね。

コロナ渦でリモートワークが増え、飲み会に行くよりも健康に投資しようという人が増えていると角先生は仰います。これを機に是非あなたも自分の歯を見つめ直してみてください。