タバコを吸うと歯が黄ばむのはなぜ?
唾液には、歯の表面を薄くコーティングするために「ぺリクル」という成分が含まれているので、普段は飲食することによる歯への刺激から、歯を守ってくれています。しかし、ぺリクルはタバコに含まれるタールと結びついてしまう特性ももっているのです。
「タール」は、タバコに含まれる数多くの成分の中でも、歯の黄ばみの原因といわれています。
タバコを吸うと口の中全体に煙が行き渡り、歯の表面についたタールがペリクルと結びつくことで歯が着色してしまいます。少量であれば、正しい歯磨きをこまめに行うことで除去できるでしょう。しかし、日々タバコを吸い続けることでタールとペリクルが何層にも積み重なれば、簡単には除去できません。
歯についたヤニを落とす方法
何年もタバコを吸い続け、歯についた頑固なヤニが落とせず悩んでいる人も多いのではないでしょうか。歯に汚れがあると、人と話をするときに口元が気になってしまいますよね。
ここでは、歯についたタバコのヤニを落とす方法を3つ紹介します。
歯科医院でクリーニング(PMTC)をする
歯についたヤニを除去する方法のひとつに、歯科医院でのクリーニングがあります。PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)とも呼ばれ、歯科医や歯科衛生士が専用の器具を用いて汚れを除去します。
PMTCは、ゴム製のチップと研磨剤入りの歯磨き粉を使って、歯の表面を磨きます。
ヤニ除去のクリーニングとしてはもちろん、虫歯や歯周病の予防にもつながるため、定期的に行うことで口腔内を清潔に保てます。
歯科医院や歯の状態にもよりますが、1時間程度の施術なので、歯の黄ばみが気になりだしたら定期的に受診すると良いでしょう。また、虫歯や歯周病治療で、すでに通っている歯科医があれば、PMTCが可能か確認してみてください。
ホワイトニングをする
タバコのヤニを落とすために、ホワイトニングを行うという選択もあります。専用の薬剤を使用して、歯を白くする治療方法です。
歯を削る必要がなく、負担も少ないため、歯の汚れに悩む多くの人が利用しています。
ホワイトニングには、歯科医院で行う「オフィスホワイトニング」と、自宅で行う「ホームホワイトニング」があります。
オフィスホワイトニング
オフィスホワイトニングとは、歯科医院に来院して行うホワイトニングです。歯の汚れを除去したあと、専用のホワイトニング剤を歯の表面に塗り、光を当てることで歯についた色素を分解します。この工程を希望の白さに合わせて1~3回程度行います。
即効性はあるものの、歯の色も戻りやすい傾向があるため、定期的に通いながらホワイトニングすることをおすすめします。
注意点として、オフィスホワイトニング後は、1日~2日タバコを控えた方が良いとされています。
オフィスホワイトニング中のタバコについては、下記の記事でも詳しく説明しているので参考にしてください。
「オフィスホワイトニング中もタバコは吸ってOK!ただしケアが重要」
ホームホワイトニング
ホームホワイトニングは、その名前のとおり自宅で行うホワイトニングです。それぞれの歯に合わせたマウスピースにホワイトニング剤を塗布して、自宅で2~3時間装着することにより効果が現れます。オフィスホワイトニングに比べると、歯科医に通う頻度は少なく済みます。
ホワイトニングのメーカーにもよりますが、終了後約6時間はタバコを吸わないほうが良いでしょう。
ヤニ取り効果のある歯磨き粉を使う
クリーニングやホワイトニングのほかに、普段の歯磨きで除去する方法もあります。市販の歯磨き粉の中には、タバコのヤニを除去できるものがあるので積極的に使いましょう。
厚生労働省が発表した薬用歯磨き粉の製造販売承認基準に、ヤニの除去効果のある成分が記されています。効果のある成分としては、以下のとおりです。
・ポリリン酸ナトリウム
・ポリエチレングリコール
・ポリビニルピロリドン
出典:「薬用歯みがき類製造販売承認基準について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/hamigaki_kijyun.pdf)
歯磨き粉にこれらの成分が配合されているのかを確認し、普段の歯磨きに取り入れると良いでしょう。
定期的に歯医者へ通ったり、長時間マウスピースを着用したりすることが難しい方に、おすすめの方法です。
歯科医院でのヤニ取りの保険適用について
歯科医院でのヤニ取りの保険適用について解説します。
保険適用でのヤニ取り
ヤニ取りで歯科医院を受診した際に、虫歯や歯周病などの病気が見つかった場合はクリーニングが保険適用となります。これは、病気の治療を目的としたクリーニングのみに保険が適用されるからです。
そのためヤニ取りのケアや、着色除去などが目的のクリーニングは保険適用にはなりません。また、ホワイトニングも審美目的と判断されるため保険適用外です。
保険適用の範囲内で行われるクリーニングは、歯の周囲に付着している歯石の除去がメインです。歯石の量が少なければ1回で終わることもありますが、多い場合は2〜6回程度に分けてクリーニングします。1回あたりの時間は15分~30分程度です。
保険診療で行われるクリーニングの費用相場は、初診で約3,000円〜4,000円程度です。2回目以降は、約1,500円〜2,500円程度と少し安くなります。
保険適用外でのヤニ取り
歯周病や虫歯といった病気の治療を目的としない歯のクリーニングは、すべて保険適用外です。
保険適用外で歯をクリーニングする場合の費用相場は、約7,000円〜20,000円程度です。医院ごとに料金設定が異なるため、クリーニングを受ける前に確認しましょう。
保険適用外でのクリーニングは審美目的での施術に対応しているため、より美しい歯に近づけます。ヤニ取りや歯石の除去に加え、歯の黄ばみをきれいにしたり、1回の施術ですべての汚れを落としたりすることも可能です。
普段からできる歯の黄ばみ予防
「これ以上歯の黄ばみに悩みたくない」と思っていても、タバコを辞めるのは難しいという人も多いのではないでしょうか。ここからは、普段からできる歯の黄ばみ予防を紹介します。
ヤニ取りパイプを使用する
タバコを吸った後にフィルターをよく見ると、黄色く変色していることがあります。タバコについているフィルターだけでは、タールの侵入を防ぎきることはできません。
そこで、タバコのフィルターにヤニ取りパイプを装着します。タバコの不純物がフィルターに溜まる仕組みになっているため、口腔内に入るタールの量を減らすことができます。日常的にヤニ取りパイプを使用することで、歯に付着するヤニの量を抑えることにつながるでしょう。
歯を傷つけない
タバコのヤニを歯につけないためには、歯を傷つけないよう気をつけることも大切です。なぜなら、歯に細かい傷やへこみがあると、そこに汚れがたまりやすくなってしまうからです。
ヤニなどによる歯の着色を取るために、歯の消しゴムなども販売されていますが、使いすぎや、強くこすることは避けましょう。歯の消しゴムの使用方法を誤ると、歯のエナメル質を傷つけ、かえって汚れやすくしてしまうこともあります。
また、普段の歯磨きのときにも、力を入れすぎないよう注意しましょう。とくに研磨剤の配合量が多い歯磨き粉を使い続けると、歯を傷つきける原因になります。使用方法をしっかり理解したうえで、使用するようにしましょう。
加熱式のタバコを使用する
歯にヤニがつくのを防ぐためには、加熱式のタバコを使用するのもおすすめです。加熱式のタバコは、通常の燃焼式タバコよりもタールの発生量が少ないため、歯の黄ばみを抑えられます。
ただしタールの含有量は完全にゼロではないため、多少の黄ばみの発生リスクはあります。また商品によってはニコチンが含まれている場合があるので、健康にまったく害がないというわけではありません。
加熱式タバコで歯のヤニを防げたとしても、虫歯や歯周病リスクを高めるおそれもあります。くれぐれも吸い過ぎには注意しましょう。
普段からセルフケアをする
普段からセルフケアをすると歯の黄ばみを抑えられます。喫煙後すぐに歯を磨いたり、ホワイトニングを定期的に行ったりすることが大切です。
喫煙後すぐに歯磨きをするとヤニの付着を防げます。水で口をゆすぐだけでもある程度の効果が期待できるため、歯磨きが難しい場合は取り入れてみてください。
またホワイトニングはタバコ以外にも、食事やコーヒーなどによる黄ばみも落とせます。ただし、歯の白さをキープさせるためには定期的なメンテナンスが必要です。
オフィスホワイトニングであれば3~6か月、ホームホワイトニングであれば2年から3年のペースで歯科医院に通うのが理想的です。
歯科医院に定期的に通う
歯の黄ばみを防ぐためには、歯科医院に定期的に通いましょう。タバコのヤニでできた黄ばみ以外にも、歯磨きでは落としきれない歯垢や歯石を落とせます。
歯垢や歯石を除去すると、口臭の予防・改善につながります。さらに虫歯や歯周病の原因である菌の増殖を抑えられるため、歯の健康を保つうえでも重要です。
また、歯科衛生士から適切な歯の磨き方を教えてもらえるので、口内を清潔に保つ意識を高められます。
まとめ
今回は、タバコのヤニで歯が黄色くなる理由やケアの方法を紹介しました。普段から頻繁にタバコを吸う人は、どうしても歯のヤニが気になってしまうでしょう。だからといって、タバコを控えることだけが、黄ばみ予防になるわけではありません。歯の黄ばみはタバコだけでなく、コーヒーやお茶による色素沈着によっても起こり得ます。
ついてしまったヤニには、歯のクリーニングやホワイトニング、ポリリン酸ナトリウムなどが配合されている歯磨き粉で対応しましょう。また、普段から汚れがつかないように予防することも大切です。